たろうはかせの孤軍奮闘記

公認会計士目指しています。1991年生まれ26歳。現実逃避にブログでも書きます。

バイト先(某スーパー)の奇妙な客その2 万引き犯

 

私は現在、某スーパーで品出しのアルバイトをしている。「品出し」とは読んで字のごとく、品を出す、つまり入荷してきた商品を陳列するアルバイトのことだ。こんなことを書いている時点で、もういっそのことバイトなんて辞めてしまったほうが楽なんだけど、まだ必要な金が集まっていないから、それはもう少し後のことになる。来年、3月か4月のタイミングで辞める。今回は、そのバイトを辞めるまでの間に遭遇した面白い?出来事について書いてみる。

 

 

 

客「お兄さん、今日も頑張っているね」

私「ありがとうございます。頑張ります」

 

 

 

バイト中、レジ打ちをしていると、時々温かい声をかけてくださるお客さんがいる。接客業ということもあって、普段「ありがとう」や「頑張ってね」なんて言われることが無い中でそのような声をかけてくれる人は神様に見えてくる。本当にありがたい話だ。こういう人が一人いるだけで救われた気持ちになることもある。

今回声をかけてくれているお客さんは、年齢60前後の男性、身長は160ー170くらいだろうか。ちなみに前歯がない。腰が曲がっているため、正確な身長は分からないが、スラリとした体型で、それなりに長身だ。お世辞にも身なりが良いとは言えないが、こんな私に優しい声をかけてくれているだけあってきっと柔和な性格をしているのだろう。

 

しかし、このお客さんには一つだけ重大な問題点があった。

 

万引き犯なのである。

 

これは店長から聞いた話だ。店の防犯カメラに、そのお客さんが袋に商品を忍ばせる映像が残っていたという。しかも複数回。その手法は結構大胆かつ狡猾といえる。一度お会計を通し、清算済みのカゴ(お買い物カゴとは別の色をしている)または商品を詰めた袋に、別の商品を忍ばせる。周りから見れば、買い物をしてお店を出ているようにしか見えない。あとは正々堂々と店の入口から出て終わりである。

 

 

店長からそのお客をみたら気をつけろ、という御達しがあった。私はバイト店員である為、万引き犯を捕まえる権限は与えられていない。少なくとも働いている某スーパーの中ではそういう決まりになっている。従って、万が一そのような場面を見かけた場合、マネージャーや店長に伝えることになっている。

しかし、このようなお客さん(万引き犯)であるが、性格はいたって普通の人である。というか少なくとも僕にとっては優しいし、決してそんなことをする人には見えない。最初そのことを伝えられた時、嘘でしょ?と思ったくらいだ。しかし店長が言うならば間違いないだろう。万引き犯は万引き犯。そのあたりの気持ちの線引はしっかりとしなければならない。

 

 

 

 *****

 

 

 

ウィーンと自動ドアが開く音が聞こえる。例の万引き犯だ。「いらっしゃいませ」と心のない空虚な言葉を発しながら、私はレジ打ちをしている。しばらくすると、そのお客さんは私のレジに並んだ。なぜかそのお客さんは私のことを気に入ってくれているようで、最近は私のレジに並んでくれることが多い。

 

客「今日も大変だね。頑張ってね」

私「ありがとうございます。嬉しいです」

 

私は応対しながらレジ打ちをする。嬉しいというのは本当だ。本当に嬉しい。例えその言葉をかけてくれている相手が万引き犯だったとしても、「頑張って」なんて言ってくれる人は中々いない。本人が万引き犯だと思わせないための策として、そのような言葉を発しているのだとしても、である。

 

 

お会計を終えて、本人は商品をレジ袋にいれたりする台に行き、袋づめをしている。そこへ背後から忍び寄る店長、マネージャー。商品棚越しに冷徹な視線を送る。おーい、おじさん、あんた完璧にマークされてるよ。どうやら万引きというのは現行犯逮捕が通でなければならないようで、店長はきっと犯人が尻尾を出すのを待っているのだろう。そのことに当の本人は気づいているのかわからないが、レジ打ちをしている私からはその3人がはっきり見える。シュールレアリスティックな光景だ。齢60近いということもあって、お客さんの袋詰の動作は遅い。一つ一つ丁寧に、というか丁寧すぎないか?と思うくらいに、時間をかけて一つずつ商品を袋詰していく。確かに怪しい。そしてその動作をじっと静かに見つめる店長とマネージャー。時間にして5分以上か。店長は鋭い視線を送り続ける。もう少しで目からビームがでるんじゃないかというくらい、瞳孔をカッと開いてその客を見つめている。まるで獲物をじっと待つハシビロコウのように。店長は微動だにしない。その後ろでは、オロオロと周りの視線を気にしながら、万引き犯を見つめるマネージャー。おい、マネージャー、あんたが挙動不審でどうする。二人の正反対な性格や動作に笑いを堪えるのが精一杯である。

 

 

その光景を見て、私は唐突にトムとジェリーを思い出した。子供の頃に熱中した記憶がある。猫のトムは鼠のジェリーを捕まえようと四苦八苦するが、結局うまく行かずに終わる。この場合トムが店長で、ジェリーが万引き犯だろうか。しかし、お話と違うのは、トムは情に流されやすいということに対して、店長は容赦ないということである。躊躇いなく警察に突き出す。無慈悲。

 

だが、そのおじさん(ジェリー)はボロを出さない。やはりそのあたりは流石プロ。周りを見ないようでしっかり見ている。マークされていることを知ってか知るまいか、特になにも不審な行動を見せずに去っていった。現行犯ではない限り、店長も捕まえられない。店長は残念そうな顔をしている。おじさん、あんたすげぇよ・・・。

 

 

ちなみにそのお客さん、結構常連である。(2日に1回くらい)

温かい言葉をかけてくれるので、僕はけっこう好きである。

万引きはいけませんが、また来てください。

お待ちしています。